研究情報
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2025.08.29 海水淡水化・資源回収に期待の膜の改良
膜蒸留結晶化を強化する高性能防汚光熱膜
High-performance antifouling photothermal membranes for enhanced membrane distillation crystallization
膜蒸留結晶化(MDCr)技術は、水の生産と高塩水溶液からの原料回収という同時にある2つのニーズに対応する可能性を秘めている。しかし、MDCrの大規模な実装は、エネルギー消費の大きい大量の原料加熱と膜の汚染によって妨げられている。ここでは、疎水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に酸化グラフェンナノ粒子(GO)をスプレーコーティングして調製した光熱自己発熱膜を開発し、優れた太陽光から熱への変換効率と防汚性を示した。最適な条件下(PVDF-GO5)では、1太陽照射(1000 W/m²)下において2分間で膜表面温度81.4°Cに達して熱効率75%を実現し、これは、熱効率35%の未改質PVDF膜と比較して115%の増加であった。膜はまた、1.10 L /m²hの蒸発流量を示し、これは元の膜の2倍以上(0.51L /m²h)の値であった。この性能により、海水および5 M NaCl塩水からのNaCl結晶の抽出が容易になり、平均結晶サイズの周囲に36%の分散を持つ立方晶が得られた。光熱膜の汚れ安定性は、汚れプロセスにおける膜表面自由エネルギー成分の役割を評価することによって研究された 。興味深いことに、バイオフィルムの形成は大腸菌でみると60%、黄色ブドウ球菌では90%まで減少し、タンパク質の汚れもコーティングされていない膜と比較して大幅に減少した。これらの発見は、MDCr 動作における温度分極とファウリングの問題の両方に対処する GO ベースのナノ材料の実現可能性を示し、大規模実装に近づけることを示している。
© 2025 The Authors. Published by Elsevier B.V. Creative Commons Attribution 4.0 International License (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
https://doi.org/10.1016/j.desal.2025.118847
Embaye Alula Selomon , et al.
Desalination, 2025;608
doi:10.1016/j.desal.2025.118847

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