研究情報
Research information

背景：伝統的な漢方処方である桃紅四物湯（THSWD）が高血圧管理での診療に適応されてきている。我々の先行研究では、THSWDがマウスにおける高塩分誘発性高血圧を軽減することが示された。本研究は、THSWDの高血圧治療における根本的なメカニズムをさらに明らかにすることを目的とする。
方法：THSWDの化学組成は先行研究においてUPLC-Q/TOF-MSを用いて同定された。本研究では、in vivoおよびin vitro実験を実施した。ATF4+/−マウス(KO)およびC57BL/6マウス(WT)にTHSWD治療有あるいは無で高塩分の食事を与えた。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)をATF4阻害有あるいは無で高NaCl条件下いおいて培養した。THSWDの保護効果を評価するために血圧、血管損傷、カルシウム過剰負荷、フェロプトーシスを測定した。
結果：生体内において、高塩分食は高血圧、血管壁肥厚、血管損傷、カルシウム過剰負荷、フェロプトーシスを引き起こしたが、これら全てはTHSWDおよびカルシウムチャネル遮断薬ニフェジピン（NI）によって有意に軽減された。THSWDはまた、高塩分によるATF4の過剰発現を減少させた。同様の効果がin vitroでも観察され、THSWD、フェロプトーシス阻害剤フェロスタチン-1（Fer-1）、細胞内カルシウムキレート剤BAPTA-AM、およびNIは、高NaClによるカルシウム過剰負荷とフェロプトーシスを改善した。これは、CaMK4、CACNA1C、IP3R、RyR2、GPX4、ACSL4、LPCAT3の発現の減少を伴った。さらに、高塩分食を与えたATF4+/−マウスと比較して、THSWD投与マウスでは血圧のより大きな低下、血管内皮機能の改善、カルシウム過剰負荷とフェロプトーシスのより優れた抑制が認められた。ATF4の阻害またはsiATF4とTHSWDのin vitroでの併用処置は、異常なバイオマーカーレベル（鉄、カルシウム、12-HETE、15-HETE、GSH、GSH/GSSG、MDA、LPO）を回復させ、カルシウム過剰負荷およびフェロプトーシス関連マーカーを正常化した。
結論：THSWDは高塩分誘発性高血圧において血圧を効果的に低下させ、血管損傷を保護する。その保護効果は、ATF4の調節を介したカルシウム過剰負荷とフェロプトーシスの抑制によって達成される。
© 2025 Lam, Xu, Xie, Liang, Xie, Poon, Xiao and Chen.　Creative Commons Attribution NonCommercial 4.0 International License (http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/).
https://doi.org/10.3389/fnut.2025.1647017