研究情報
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2025.12.26 尿素と塩のコンビネーション
Tailored solution environment for protein crystallization: tuning solubility, nucleation, and growth by urea and salt
タンパク質結晶化のための最適化された溶液環境:尿素と塩による溶解性、核形成、成長の調整
尿素は最近、亜変性濃度においてタンパク質間相互作用を調節することが示されている(M. Madani et al. Soft Matter 2025, 21, 1937–1948)。そこで、尿素と塩が熱力学的および速度論的パラメータの両方を調整することで、タンパク質結晶化にどのように影響するかを解析している。溶解度は熱力学的な重要な性質であり、2つの添加物によって異なる影響を受ける:尿素はリゾチーム溶解度を増加させる一方、塩化ナトリウムは塩析効果を誘発せずに溶解度を減少させる。溶解度を第二ビリアル係数(B2)の関数としてプロットすると、データはマスターカーブに収束する。これらの測定から、溶液と結晶間の化学ポテンシャル差(Δμ)を計算し、相図全体にわたるΔμマップを生成する。選定された地点での結晶反応速度はビデオ顕微鏡を用いて測定された。塩は誘導時間を短縮し結晶成長を加速させるが、尿素は逆の効果をもたらす。速度論的パラメータのΔμへの依存性は、それぞれ古典的な核生成理論と誕生・拡散成長モデルによって説明される。注目すべきは、尿素がより過飽和度が低く、Δμが固定された条件下での結晶化を可能にし、塩単独と比べて核生成と成長の両方を促進することである。全体として、本結果は尿素と塩が熱力学的要因と動力学的要因を独立に制御する仕組みを明らかにした。我々は、塩および尿素のような非特異的添加物による溶液環境の調整が、球状タンパク質の結晶化条件を最適化する普遍的戦略となり得ると提案する。
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https://doi.org/10.1039/d5cp01614b
Hamacher T. , et al.
Physical Chemistry Chemical Physics, 2025;27(31)16558-16572
doi:10.1039/d5cp01614b

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