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2025.11.28 塩がする水の動きの謎を解く
How Salt Solvation Slows Water Dynamics While Blue-Shifting Its Dielectric Spectrum
塩の溶媒和が水のダイナミクスを遅延させつつ、その誘電スペクトルを青方偏移させる仕組み
水には本来、微量の様々な塩類が含まれているが、塩類が水の物理的特性に影響を与える微視的プロセスは依然として解明されていない。特に、塩添加による水の誘電率低下のメカニズムは未だに議論されている。マイクロ波加熱で一般的に使用される電磁放射の主吸収ピークは、塩溶液中でより高い周波数にシフトし、水の分子動態の加速を示唆する。しかしこの観測は、粘度の同時増加や、イオン性溶質が水分子の運動を遅らせるという実験報告と矛盾する。本研究では、火星南極の厚い氷殻下での液状水の最近の発見に関連しそうな過塩素酸塩水の誘電スペクトルを計算するために、原子間力と分子双極子を模擬する高品質な量子力学データで訓練された深層ニューラルネットワークモデルによる分子動力学(MD)シミュレーションを用いた。私たちの結果は、誘電率の減少と吸収ピークシフトの両方が、水分子配向秩序のイオン誘起変化に起因する可能性を明らかにした。さらに、分子双極子-双極子相関関数の自己成分が、第一カチオン溶媒和殻内での動的遅延の明確な兆候を示し、実験的に観測された粘度増加と一致することを実証した。
© 2025 The Authors. Published by American Chemical Society. Creative Commons Attribution 4.0 International License (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.5c01401
Pabst Florian , et al.
Journal of Physical Chemistry Letters , 2025;16(31)7915-7920
doi:10.1021/acs.jpclett.5c01401

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